健ちゃんの妄想部屋
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僕の頭の中の物語たち
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ロイは何も持たないのが好きでした。
買い物に行く時は必要なお金をポケットに突っ込んで出かけました。
お金も必要になさそうなら手ぶらで出かけました。
その方が動きやすいから。
念のためなんて考えはロイにはありませんでした。
ある日、ロイが町を歩いていると、一人の少女が道で泣いていました。
「どうしたんだい?」
ロイが話しかけると、少女はロイを見上げて右手を見せました。
その手にはアイスの部分がなくなったソフトクリームがありました。
「そうか。アイスを落としてしまったんだね」
少女は黙って頷きました。
「でも困ったな。僕はお金を持っていないんだ。貧乏ってわけじゃないよ」
少女はまた泣き出しました。
ロイは辺りを見渡しましたが、道行く人は二人を見てみぬ振りをします。
「ちょっと待っててね」
ロイは急いで家に戻りお金を取ってきました。
走って20分くらいだったでしょうか。
ロイは一生懸命走りましたが、戻ったときにはそこに少女はいませんでした。
ロイはとても残念に思いました。
「そうか。お金くらい持ってた方がいいんだ」
それからロイはどこへ行くにもお金を持つようになりました。
足りないと困ると思い、いつも多めに持っていました。
やがてポケットではしまえなくなり、財布を持つようにもなりました。
またある日、ロイが町を歩いていると雨が降ってきました。
ロイは傘を持っていませんでした。
雨が降らないかもしれないのに傘を持ち歩くなどという考えはロイにはなかったからです。
ロイはしばらく花屋の軒下で雨宿りをすることにしました。
ロイはとてものんびりした性格だったので、ほんのしばらくの雨宿りはむしろ楽しいくらいでした。
やがて一人の青年がロイが雨宿りをしている軒下に駆け込んできました。
ロイが青年に目をやると、青年はとても慌しく、足をバタバタさせていました。
まるで「まだ止まないか。まだ止まないか」と言わんばかりの落ち着きようのなさでした。
「急いでいるのかい?」
「え?あ、はい」
「このくらいの雨が何だっていうんだい。急いでいるなら濡れていきなよ」
「いや、でも・・・」
ロイは青年が大事そうに抱えている物に目をやりました。
「今日これを提出しなければ大学を卒業できないんです。でも濡れてしまったら教授に読んでもらえない。それでもダメなんです」
ロイは自分が悪いことをした気になりました。
「ちょっと待ってて」
ロイは罪悪感からか、正義感からか、突然雨の中へ駆け出しました。
家に帰り、傘を持ってくるためです。
ロイは全力で走りました。
再び花屋に戻ってくるまでに15分ほどかかりました。
そこに青年の姿はありませんでした。
「レポートの提出には間に合ったのだろうか。レポートは濡れずに済んだのだろうか」
ロイはとても心配になりました。
それからのロイはいつでも、何でも持って家を出ました。
ただの散歩でも財布を持っていき、晴天でも傘を2つ持っていました。
いつでも貸してあげられるようにペンは全て2つずつ用意し、手帳も肌身離さず持ち歩きました。
非常食として水とお菓子も持って歩きました。
「念のため念のため」
そんなわけだからロイはいつも大きなリュックサックを背負っていました。
周りはいつもそんなロイを不思議な目で見ましたが、ロイは全然気付きませんでした。
「これで何があっても対応できるぞ」
ロイはいつもそう思って外へ出かけていきました。
ところがそれからというもの、ロイは困った人に会わなくなりました。
どこを見渡しても困った顔をしている人がいないのです。
晴れの日も雨の日も。
朝も夜も。
人々は実に快適そうに暮らしているように見えました。
「せっかくみんなを助けてやろうと思ったのに」
ロイはとても悔しがりました。
ロイはみんなの役に立ちたかったのです。
自分だけ良ければいいと思っていたロイは、みんなのために色々な物を背負いました。
でもそんなロイを、人々は必要とはしなかったのです。
なぜなら、人々から見て困っているように見えたのはロイの方だったからです。
買い物に行く時は必要なお金をポケットに突っ込んで出かけました。
お金も必要になさそうなら手ぶらで出かけました。
その方が動きやすいから。
念のためなんて考えはロイにはありませんでした。
ある日、ロイが町を歩いていると、一人の少女が道で泣いていました。
「どうしたんだい?」
ロイが話しかけると、少女はロイを見上げて右手を見せました。
その手にはアイスの部分がなくなったソフトクリームがありました。
「そうか。アイスを落としてしまったんだね」
少女は黙って頷きました。
「でも困ったな。僕はお金を持っていないんだ。貧乏ってわけじゃないよ」
少女はまた泣き出しました。
ロイは辺りを見渡しましたが、道行く人は二人を見てみぬ振りをします。
「ちょっと待っててね」
ロイは急いで家に戻りお金を取ってきました。
走って20分くらいだったでしょうか。
ロイは一生懸命走りましたが、戻ったときにはそこに少女はいませんでした。
ロイはとても残念に思いました。
「そうか。お金くらい持ってた方がいいんだ」
それからロイはどこへ行くにもお金を持つようになりました。
足りないと困ると思い、いつも多めに持っていました。
やがてポケットではしまえなくなり、財布を持つようにもなりました。
またある日、ロイが町を歩いていると雨が降ってきました。
ロイは傘を持っていませんでした。
雨が降らないかもしれないのに傘を持ち歩くなどという考えはロイにはなかったからです。
ロイはしばらく花屋の軒下で雨宿りをすることにしました。
ロイはとてものんびりした性格だったので、ほんのしばらくの雨宿りはむしろ楽しいくらいでした。
やがて一人の青年がロイが雨宿りをしている軒下に駆け込んできました。
ロイが青年に目をやると、青年はとても慌しく、足をバタバタさせていました。
まるで「まだ止まないか。まだ止まないか」と言わんばかりの落ち着きようのなさでした。
「急いでいるのかい?」
「え?あ、はい」
「このくらいの雨が何だっていうんだい。急いでいるなら濡れていきなよ」
「いや、でも・・・」
ロイは青年が大事そうに抱えている物に目をやりました。
「今日これを提出しなければ大学を卒業できないんです。でも濡れてしまったら教授に読んでもらえない。それでもダメなんです」
ロイは自分が悪いことをした気になりました。
「ちょっと待ってて」
ロイは罪悪感からか、正義感からか、突然雨の中へ駆け出しました。
家に帰り、傘を持ってくるためです。
ロイは全力で走りました。
再び花屋に戻ってくるまでに15分ほどかかりました。
そこに青年の姿はありませんでした。
「レポートの提出には間に合ったのだろうか。レポートは濡れずに済んだのだろうか」
ロイはとても心配になりました。
それからのロイはいつでも、何でも持って家を出ました。
ただの散歩でも財布を持っていき、晴天でも傘を2つ持っていました。
いつでも貸してあげられるようにペンは全て2つずつ用意し、手帳も肌身離さず持ち歩きました。
非常食として水とお菓子も持って歩きました。
「念のため念のため」
そんなわけだからロイはいつも大きなリュックサックを背負っていました。
周りはいつもそんなロイを不思議な目で見ましたが、ロイは全然気付きませんでした。
「これで何があっても対応できるぞ」
ロイはいつもそう思って外へ出かけていきました。
ところがそれからというもの、ロイは困った人に会わなくなりました。
どこを見渡しても困った顔をしている人がいないのです。
晴れの日も雨の日も。
朝も夜も。
人々は実に快適そうに暮らしているように見えました。
「せっかくみんなを助けてやろうと思ったのに」
ロイはとても悔しがりました。
ロイはみんなの役に立ちたかったのです。
自分だけ良ければいいと思っていたロイは、みんなのために色々な物を背負いました。
でもそんなロイを、人々は必要とはしなかったのです。
なぜなら、人々から見て困っているように見えたのはロイの方だったからです。
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